第9話【光は氷を溶かせるのか証明せよ】

「どういうこと…？」
暗闇で目を覚ました次郎は戸惑っていた。何故このような状況になったか分からないからだ。
「てか、寒いな…ってこれは…！」
周りを見渡すと、辺り一面が氷に覆われていた。そして…
「あそこにいるのって！」
次郎は道夫の様な人物を見つけ、慌てて走り出した。
「はざまさん！…え」
次郎は大いに戸惑った。目の前には氷漬けにされ眠っている道夫と、冷たい雰囲気を持つ道夫が2人いたからだ。
「何で、凍ってるの…？」
「"私"が非効率的な事しかしないからだ。私ならもっと効率的に最善の選択をする事が出来る」
「あんたが、凍らせたの！？」
もう1人の道夫は当然だと頷く。
「ああ…そう言えば、"私"を変身させたのは君だったな」
「…そうだけど」
「どうして"私"を変身させた？何故"私"がここまで傷つかなければならない？」
もう1人の道夫の容赦ない言葉は、ナイフの様に次郎に突き刺さる。
「そもそも、"私"も"私"だ…！何故他人ばかりに構う？何故他人ばかり優先する？"私"は"私"の事だけ気にしていれば良いというのに…！」
もう1人の道夫は憎々しげに呟く。
「それもこれも全て、君のせいだ…！君が変身させなければこんな事にはならなかった！！」
「そんなの、分かってるよ…」
氷漬けにされている道夫を守るように次郎は立つ。
「そうか…なら今、私がまとめて君と"私"を消す！」
もう1人の道夫が持っている氷の剣がより禍々しい魔力に包まれ鋭くなっていく。無表情ではあるが、もう1人の道夫の瞳は怒りに染まっていた。
「これ以上、"私"が傷つかなくてすむように！！」
「っ！」
氷漬けにされている道夫を庇う次郎ごと切り捨てようとしたその時だった。
「駄目だよ…！」
もう1人の道夫に幼い道夫が抱きついて止めた。
「な…！」
すると、氷の剣が溶けていく。もう1人の道夫が初めて動揺した。
「ミスターはざま！ミスターやました！」
「るい！？」
類が2人の元へ駆け寄る。そして、類が道夫を覆っている氷にチェンジパフュームの放つ黄色い光を当てると、氷が溶けていった。空間を覆う周りの氷も溶けていく。
「こ、こは…？」
すると、道夫が目を覚ました。
「はざまさん！」
2人は良かったと安堵している。
「くっ…！」
その様子を見ていたもう1人の道夫は表情を歪めるのであった。