まず初めに、投稿主様のご意見を否定したり跳ね除けたりする意図はありません。この場をお借りして、「解釈」という言葉が指しうる範囲について、考えを整理しご説明させていただければと思い記します。ご理解いただけますと幸いです。


「解釈」と呼ぶためには、そのキャラの発言・行動・背景描写などから読み取れる根拠が必要です。この例は、たしかに現実の心理モデルとしては自然です。しかし仮にそのキャラが「実際にそう悩んでいた」と明確にわかる描写が原作に存在しない場合、それはもはや「解釈」ではなく創作あるいは妄想の範疇に入ります。

解釈：既存の描写をもとに論理的・内在的に導出された仮説（例：「このセリフの裏にはこうした心理があるのではないか」など）
妄想／創作：作者による描写がなく、読者の嗜好や願望によって作られた設定・性格付け（例：「こうだったら面白い」「こういう設定が萌える」など）

例えば、原作に「結婚に臆病である」という描写や「自分が父のようになるのでは」と恐れるような内面のセリフ・行動が存在するならば、それは「解釈」と呼べる根拠になります。しかし、それらが一切描かれていないキャラクターに対して、「過去に家庭内暴力を受けていたのでトラウマがあるに違いない」「それゆえ結婚に前向き／後ろ向き」といった心理を被せることは、読者側の捏造であり、公式描写に依らない二次的付加でしかありません。
「どちらも間違っていない」と言えるのは、それはあくまで現実の人間であればという前提での話です。

「A or B どちらも描写されている」→ どちらの解釈も成り立つ（例：ある場面では楽観的、別の場面では内省的、等）
「AもBも描写されていない」→ どちらも妄想であり、解釈とは言えない

つまり、「どちらもあり得る」という主張は、“原作内で”そう読める余地がある場合にのみ有効であり、描写がなければ「両方の解釈が可能」という土俵にすら上がれていません。


認知心理学においても、物語理解はテキストに明示されている情報、もしくはそこから論理的に推測できる暗黙情報に基づいて構築されるとされています。
たとえば以下のような階層です。

1.テキストベースの推論（明示された文から直接導ける）
2.状況モデルに基づく推論（複数の描写から文脈上妥当と判断される）
3.スクリプト的な推論（読者の一般常識による補完）

問題は、創作においてしばしば使われるのが3番目の“スクリプト推論”のみであり、それをもって「解釈」と称することです。しかしこれは物語の文脈に沿った意味構成とは異なり、「読者自身の経験や感情」が大きく混ざった非中立的読解です。よって、スクリプト推論のみに基づく主張は学術的にも「推論の飛躍」であり正確な読解とは言えません。
一次創作においては、作者が心理描写を意図的に省略することがあります。
しかし二次創作は既に完成された物語に対する受容行為であるため、「省略された背景を補完する」のではなく、「描写のない部分に勝手な内面を足す」ことのリスクが非常に高くなります。
これはたとえるならば、地図に描かれていない道を「あるに違いない」と言って勝手に線を引くようなものです。その線が通っていたとしても、地図がそれを示していない限り、それは“道”ではなく“妄想”です。

原作キャラの「解釈」を語るのであれば、必ず描写や言動に基づいた根拠が必要です。
たとえ現実にはあり得るような心理や背景であっても、それが作中に存在しない限りは「想像」「願望」「捏造」に分類されるものであり、「解釈」とは峻別されなければなりません。
「どちらも可能性がある」という言説は、一見寛容的な態度に見えて、実は原作の構造的整合性を軽視し読解の責任を放棄する立場でもあります。
二次創作は自由と言われがちですが、読解と創作の境界線を明確に認識した上で語られるべきと思います。