はじめまして。思慮深く、臆病な匿名のひと。
文面をすごく考えて、けれど遠回しな言い方にならないよう素直に書いてくれたのだね。ありがとう。嬉しく思いながら読ませてもらったよ。

「お話していて怖いとか疲れることってないですか？」という質問に答えると、…うーん…、トータルで見ると、ないかなー、と、思う。

なぜか。なぜだろうな。ひとと話すのが怖いことだという、その感覚自体は分かるよ。こちらに敵意がなくても相手には敵意があるかもしれない。こちらに好意があっても相手にはないかもしれない。じぶんが大切に思っている考えにケチをつけられるのは嫌だし、逆に、じぶんにとっては何気なく発した一言が取り返しのつかないほど相手を傷付けるかもしれないね。
裏切られるのは怖い。誤解されるのは怖い。分かってもらえないのは怖い。「怖い」という感情はいつも思考を先回りして根拠もなく無限に湧いてくる感情の源泉で、それを湧き出す前に押しとどめるのは難しい。難しい、というか、無理じゃね、と思う。人間って、もう、そういう風にできてるんじゃないのかな。

でも、あなたと話している今は怖くないよ。こうして匿名のひとと話しているときはいつも怖くない。なぜか。それは、あなたがわたしを怖がっていないから。

わたしからも訊いていい？
わたしにメッセージを書くとき、心無い返事が返ってくるかも、と思わなかった？あなたの真剣な言葉を馬鹿にしたり、その悩みをあざ笑ったり、そういうことをわたしがあなたにするかもと、思わなかった？
たぶんさ、思わないでいてくれたよね。だからわたしの元にこのメッセージが届いたんだもの。匿名で書けるから、というのがもしかしたら理由のひとつかもしれない。でも、それだけじゃないと思ってるよ。あなたは、「わたしになら」と信頼を寄せてくれたのではない？

その信頼は、わたしがこの世でいっとう欲しいと願うものだ。
信頼って、他者からもらうもののなかで最も強いパワーだと思うんだよね。無限に湧いて止めどない恐怖を解体するだけの力があると思う。
あなたはそれをもうくれた。だから怖くないし、あなたがくれた信頼に信頼で返さねばと思うよ。
匿名のひとと話すときは、だいたいいつもそういう感じ。わたしが他者を恐れないのではなく、他者がわたしを恐れないでいてくれるんだよね。あなたが先にわたしを尊重してくれたんだよ。

例えばわたしの考え方を否定するようなことを書いたメッセージにしても、根底にはわたしへの信用があると思うんだよな。こいつならこう書いても雑に扱わないだろう、という、なんというかな、わたしという人間への信頼。だから、わたしもそれに応えるのが当然だと思って返してるよ。

もしかしたらポジティブに考えすぎなのかもな。でもさ、他者に信頼してもらいたいならまずはわたしが他者を信頼しなければお話にならないしな～。

うーん、コツと、言えることがあるとするならこれかも。じぶんが欲しいと思っているものを、まずはわたしが他者に与える…、与えるって言い方上から目線でちょっと引っかかるけど、でもそれ。

あなたが欲しいと思っているものを、あなたから他者へ与えることじゃないかな。じぶんが働きかけたことがちゃんと返ってくるよ。
恐怖心で働きかければ相手は恐怖心で返してくるし、信頼で働きかければ信頼が返ってくる。返ってくる、と、断言してしまおう。あなたに対して、「こうかもしれない、違うかもだけど」という曖昧な逃げ道を用意した言葉を送るのは不誠実だ。悩むあなたが寄りかかる止まり木を探してここに心情を書いてくれているのなら、わたしはきちんと立っていなければだものね。あなたが信頼を欲しがるなら信頼をまず見せること。愛情が欲しければ愛情を。なんであれ、それらがあなたの恐怖を解体する力をくれるよ。



と、長く書いたけど読んでくれてありがとう。わたしの言葉がなにか良い方向に役立てば嬉しいが、あなたはわたしの言葉がなくてもきちんとじぶんで気持ちを整理して選択していけるようにも思う。好きです、と、何度も書いてくれたあなたにわたしからも好意と、応援の気持ちを送るよ。
絵も、誉めてくれてありがとうね！あなたが好きなお話も、あなたが見たくないお話も、これからもいろいろ描いてくよ。ときどき思い出して、また見に来てね。

達者で。