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火星のオカルト好きの人と、こんふぃちゃんがみたいです!シュチュエーションとかはお任せいたします!
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きょうか
@kyoka_h
今朝もいつも通りに出勤し、納品された材料のチェックをする。
こんふぃ焼き屋でバイトをしている火星のオカルト好きの人こと前山白は、淡々と箱の中身を確認しては冷蔵室に運び込む力作業をしていた。
一箱、二箱……
「……一箱多くないか?」
店長から渡された発注書と照らし合わせ、納品の段ボールが一箱多いことに首を傾げる。
数え間違えただろうか?
それとも業者が間違えて多く納品したのだろうか?
何はともあれ、中身を確認してみないことには始まらない。
前山は段ボールを開ける──

そこにはみつしりとこんふぃが詰まっていた。
こんふぃ、すなわち主に灰色のおくるみを着た黄色い猫の生首のような生命体である。
それが箱の中でぷにゃぷにゃと鳴いていた。

──迷わず箱をそっと閉じる。
「……俺は何も見なかった。うん」
しかし一度封切られた箱である。
押さえた手の下から、ぷにゃぷにゃ鳴きながら一斉に外に出ようとしているような圧力が感じられた。
こんふぃが詰まった謎の箱。オカルト的には悪くない。とはいえ。
「この星のオカルト、こんふぃ絡みが多くないか?」
というかこんふぃ絡み以外のオカルトを見たことがない気がする。
曰く付きの無人駅に着けばこんふぃがわちゃわちゃとお祭り騒ぎをしているし、UMAかと思えば恵方巻きタイプのこんふぃだったし、都市伝説よろしく「今あなたの後ろにいるの」と電話をかけてきたのもこんふぃだった。
「つーか前にもこんなことあったな」
あれは蔵の中にあるいかにもいわくがありそうな箱を開けた時のことだったか。
箱からこんふぃがとめどなく出てきて収拾がつかなくなったのを覚えている。
……いやもうこの際何か曰くがありそうなものに遭遇したら悉くこんふぃだったというのはそれはそれで構わない。何だか火星っぽいし。
けれど曰くもなにもない、しかもバイト先の大して広くもないバックヤードでというのは正直勘弁してほしい。
「ま、待て! 今箱ごと外に出すから! 出るのはもう少し待て!」
前山は片手で段ボールの天面を押さえながらもう片方の手でガムテープを取り、箱がすぐには開かないように一文字に貼り付けると、両手に箱を抱えてバックヤードのドアを蹴り開け外へと急いだ。
持ち運ぶうちに箱は明らかに重みを増していく──さながら子泣き爺のように。
これは箱の中でこんふぃが増殖しているパターンだ。間違いない。
さっき一度開けた時点で既にみちみちに詰まっていたというのに、そこからさらに増えているというのか。こいつらの質量はどうなってるんだ。
腕力の限界に挑戦されながらも前山はどうにか勝手口から裏路地に出ることに成功し、サイズと明らかに見合わない重量になった段ボールを地面に下ろす。腕が限界だったのでやや乱暴な下ろし方になってしまったが、それは正直許してほしい。
すると待ってましたとばかりに箱がぶち破られ、中からこんふぃが雲霞のごとく湧いてはおふとんをはためかせながら飛び出していく。
みな、前山の周りを一周してから上空に舞い上がっていったため、気分はさながらイワシトルネードに巻き込まれた小魚のようだ。
イワシトルネードならぬこんふぃトルネードに巻き込まれること数十秒、ようやく視界が晴れた時にはこんふぃたちは既に散開していたのか空を見上げても姿は見当たらず、空になった箱の底には一着の人間サイズのおふとんが残されていた。
「……これを着れば俺も飛べたりするのか……?」
わくり……と好奇心が疼いたが、バイト中だったことを思い出し、前山は一旦その衝動を収め、畳まれたままのおふとんと空の段ボールを抱えて店のバックヤードへと戻っていった。
箱の中に最後に残っていたおふとんが、希望をもたらすものだったか、絶望をもたらすものだったか、それは前山のみぞ知る。

おわり

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きょうか
ID:kyoka_h

書いてほしいバーチャル火星小説のシチュエーション、キャラなどを放り込んでください ただしカップリング(恋愛関係)は公式(キャラのオーナーさん)が明言しているもの以外はNGとさせてください お題が来たら…

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